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骨太方針2024

 政府は6月21日に来年度予算編成の柱となる「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太方針2024)を閣議決定した。2025年度薬価改定に関しては、「イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その在り方について検討する」と記載。原案の段階には無かった「物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ」との表現を新たに盛り込んだ。
 同じく焦点となっていた費用対効果評価制度は「引き続き迅速な保険収載の運用を維持した上で、イノベーションの推進や現役世代などの保険料負担に配慮する観点から、費用対効果評価の更なる活用の在り方について、医薬品の革新性の適切な評価も含め検討する」との文言で決着。原案の段階では「適用の拡大について検討する」との表記だったが、最終的に「適用拡大の検討」との記載は削除された。
 次期中間年改定を巡って製薬産業界側は「廃止」を含めた見直しを要望。自民党内でも同様の提言が相次いでいた。その一方で財務省は既収載品の算定ルールを全て適用する「完全実施」を主張していた。最終的には「在り方の検討」との表記に留まり、かつ「イノベーションの推進」「国民皆保険の持続可能性を考慮」といった記述も並んでいることから、様々な解釈が可能な書きぶりとなっている。
 対照的に費用対効果評価制度に関しては、「迅速な保険収載の運用を維持」との記載が明記され、原案段階に盛り込まれていた「適用拡大」との文言が無くなった。財務省が保険収載の可否への適用や対象範囲の拡大などを迫っていたなか、最終的に「骨太方針2024」に記載された表現は、製薬産業界側にとっては緩和されたとの見方もできる。
 このほか「骨太方針2024」では、「さらなるスイッチOTC化の推進などにより、セルフケア・セルフメディケーションを推進しつつ、薬剤自己負担の見直しについて引き続き検討を進める」との方向性も示された。薬剤自己負担のあり方は、これまでにも厚生労働省内で何度も議論されてきたテーマだが、大幅な制度改正にまでは至らずにいた。新薬へのイノベーション評価策が次々と打ち出されているなかで、薬剤自己負担のテーマも大きな注目を集めそうだ。



(2024年6月28日掲載)



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