オピニオン

定額負担制度の導入を巡る攻防

 「国民皆保険制度の根幹を揺るがしかねない」――。8月4日に開催された民主党の「適切な医療費を考える議員連盟」の総会では、社会保障・税一体改革成案に盛り込まれた受診時定額負担制度に対し、多くの民主党議員から批判的な意見が集中した。高額療養費制度の拡充に向けた財源を、患者の負担増に求めるべきではないというのが反対派の共通した見方だ。
 今回の一体改革成案で示された定額負担制度は、初・再診時の窓口での支払いに100円上乗せする仕組み。厚生労働省では1300億円の財源が捻出できると試算する。一方、高額療養費制度の見直しを巡っては、昨年の社会保障審議会・医療保険部会で、厚労省が低所得者層の自己負担限度額を引き下げる案を提示したものの、保険者サイドからの強い反発を受けて断念した経緯がある。
 こうした背景を踏まえて、ある民主党議員は「財務省や保険者には言い難いから、患者に負担を押し付けて政治家に全ての責任を負わせようというものだ。行政と政治のリスク分散の観点から言っても、それはフェアではない」と憤る。議連の事務局長を務める梅村聡参議院議員は、今後の活動について「成案をひっくり返そうという思い切った考えはない」と説明しているが、新たに議連の会長に選任された元法務大臣の柳田稔衆議院議員は、「(会長選任に際して議員からは)頭を使うのではなく、人脈の広さを期待していると言われた」と語っている。



(2011年8月19日掲載)



前後のオピニオン

灰から灰へ、塵から塵へ
(2011年8月26日掲載)
◆定額負担制度の導入を巡る攻防
(2011年8月19日掲載)
遠く離れた国の災害
(2011年8月5日掲載)