オピニオン

街道の衰退と現在、未来

 江戸時代に入り、徳川幕府は街道整備、つまり現在の道路整備事業を全国的に展開した。幕府が直轄した東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道のいわゆる五街道はあまりにも有名で、このほか、五街道以外の主要な街道である脇街道(脇往還)が整備された。各藩による独自の街道整備も進み、当時の交通ネットワークの全長は1万5000kmにも及んだという。
 この街道網、明治時代に鉄道が登場してから急速に衰退した。ただ、今の鉄道の路線が引かれているのは、旧街道が基礎であることも多く、当時の宿場町が主要なターミナルになっていることもしばしば。風情こそ残っていないが、当時の宿場さながらの賑わいをみせている。一方、宿場に線路を引くことを拒否した結果、駅近に人を持っていかれて衰退することも少なくなかった。さらに、鉄道網が初めから引かれていないところでは、当時の古い町並みが残っていて観光の目玉になっている場所もある。
 色々な環境変化が後にどのような影響を及ぼすか誰にも分かるものではないが、街道のケースで言えば、当時の人たちの判断の是非は、今現地にいる人々が決めるべきこと。現在は環境の変化に基づく結果について、それ予測するために情報を集め、検討することは当時よりもできる。街道に限らず、事業や仕事、生活の全てにおいて、致命傷を避けるためには、判断に資する材料を集め、それを見逃さないことが重要になってくるのだろう。



(2019年3月29日掲載)



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(2019年4月5日掲載)
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(2019年3月29日掲載)
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(2019年3月22日掲載)