オピニオン  
 
確かに木曽路は山の中
 
   木曾路はすべて山の中である――。島崎藤村の長編小説「夜明け前」のあまりにも有名な書き出しだ。木曽路とは、江戸時代に制定された五街道の中山道の一部。現在の長野県塩尻市に設置されていた贄川宿から岐阜県中津川市の馬籠宿までに至る道筋を指す。峠越えが連続し、悪路、険路も多いなど、歩くのには非常に難儀する道だったとの記録が残っている。ただ、現在では当時の雰囲気を今に伝えているということで、世界的にも知る人ぞ知る日本の観光スポットとなった。筆者も最近この道を歩く機会を得たが、確かに木曽路は山の中。山道や足下に敷かれた石畳、そこを抜けては現れる街並み、体力的にきついものがあったが、宿場の風情が色濃く残る道のりを存分に楽しむことができた。
 歩いてみて感じたことは、都市部と比較して、飲食店や各種施設が圧倒的に少ない点。これは木曽路に限ったことではないが、それが地域の特色や風情というものに繋がっており、ある種の魅力となっている。ただ土地の人に言わせると、近年は気に入って移住してくる人もいるが、日々の生活に不便さを感じ、定着する例はごく限られるという。医療機関も選択できる状況には無く、この点は非常に苦労をしているそうだ。地域の特色や特性を活かしながら、インフラをどのように整備していくかは大きな課題。居住者が安心して暮らせる社会があってこそ、魅力的な観光資源も存続できるというものだろう。

(2019年5月24日掲載)
前後のオピニオン
「モリブデン99」世界初の商業生産に着手
(2019年5月31日掲載)
◆確かに木曽路は山の中
(2019年5月24日掲載)
「医師の働き方改革」の影響
(2019年5月17日掲載)