オピニオン

「医師の働き方改革」の影響

 政府挙げて「働き方改革」が叫ばれるなか、1年半以上にわたって審議を行ってきた「医師の働き方改革に関する検討会」の報告書が3月にまとまった。時間外労働の上限規制の是非ばかりが注目を浴びているが、製薬企業の活動にも影響を及ぼしそうな指摘も報告書には散見される。
 たとえば、次のような記述がある。「労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たるが、医師については、自らの知識の習得や技能の向上を図る研鑽を行う時間が労働時間に該当するのかについて、判然としないという指摘がある。このため、医師の研鑽の労働時間の取扱いについての考え方と『労働に該当しない研鑽』を適切に取り扱うための手続きを示すことにより、医療機関が医師の労働時間管理を適切に行えるよう支援していくことが重要である」。
 「医師の研鑽の労働時間の取扱いについての考え方と『労働に該当しない研鑽』を適切に取り扱うための手続き」をいつ、どのような形で示すのかについて言及はないが、「新薬の知識を習得する」ための時間が、順当に「労働時間」に該当するのか、それとも「労働時間に該当しない研鑽」とされるケースもあるのか、その判断いかんでは、製薬企業も対応を迫られる可能性がある。診療科目によって薬物治療の占める比重は異なるから、そうした事情までが判断を左右するとなれば、相当きめの細かい配慮を求められることにもなりそうだし、MRの活動(ひいては各企業の営業戦略)にまで影響が波及しないとも限らない。また、「情報提供ガイドライン」との関係においても種々取り沙汰されている、医師を講師とするセミナーなどは、働き方改革の観点からも検討を要することになりそうだ。
 「医師の働き方改革」は、製薬企業、そしてその社員の「働き方改革」にまでつながる潜在力を秘めているのかもしれない。



(2019年5月17日掲載)



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