オピニオン  
 
「モリブデン99」世界初の商業生産に着手
 
   日本メジフィジックスは今年3月29日、モリブデン99の自社生産プロジェクトに着手したと発表した。
 がんの骨転移などの診断に使用されるテクネチウム製剤の原料であるモリブテン99は、原子炉で製造する特殊性から100%輸入に頼っている。しかし、モリブテン99を製造している海外の原子炉の多くは老朽化しており、供給不足のリスクが問題視されていた。そのため、内閣府では官民検討会を立ち上げ、アクションプランを2011年7月にまとめた。アクションプランでは、中性子放射化法による国内製造を事業化する方針を打ち立て、5年程度で国産事業を開始するという目標を掲げた。
 しかし、モリブデン99を誰が製造するかという問題は、棚上げにされた。中性子放射化法も原子炉を使用することから、企業側は「事業者でやるのは無理」と指摘。一方、厚労省は「民間でやるべき」と主張したほか、事業化に向けて国から補助金を支給するなどの対応も「考えていない」とした。掛け声だけで終わった感は否めない。折しも、東日本大震災の発生により原子炉自体が停止する状況となったが、仮に震災が発生せず、当時の民主党政権が継続したとしても、アクションプランの実現はできなかったであろう。
 あれから8年。日本メジフィジックスは世界で初めて、原子炉を用いない電子加速器によるモリブデン99の商業生産に単独で着手した。無事に成功することを心から願いたい。

(2019年5月31日掲載)
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◆「モリブデン99」世界初の商業生産に着手
(2019年5月31日掲載)
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