オピニオン

先送りされる大型成分のスイッチ化

 注目を集めていた消化性潰瘍治療薬のPPI製剤のスイッチOTC化が「否決」された。8月1日に開かれた厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」。日本消化器病学会が安全性の面で「問題なし」としていたにもかかわらず、臨床医の委員から強い反対を受けたためで、大型のスイッチOTC薬の登場は、またしても先送りされる形となった。
 医師委員の「スイッチ化反対」の根拠となったのは、薬剤師による販売体制の不備だった。厚労省が提示した薬剤師によるOTC薬販売の実態調査のうち、「濫用などの恐れのある医薬品を複数購入しようとした時の対応」の調査項目で、「質問されずに購入できた」との回答が36.6%も占めていた。この点を医師委員は見逃さず、安全性の観点からスイッチ化に賛同していた学会の意見も退けた。
 薬局・薬剤師による販売体制の不備を突かれ、スイッチOTC化が頓挫したケースはこれまでにも少なくない。薬剤師による「対面」での販売が義務付けられる要指導医薬品を全く扱っていない薬局も、まだまだ存在している。次回の評価検討会議には、認知症改善薬「アリセプト」などの候補成分が審議にかけられる見通しだが、「はっきり言って現状ではスイッチ化はあり得ない」とみる関係者は、日本薬剤師会内だけでなく厚労省の中にもいる。ある厚労省の担当官は「まずは薬局・薬剤師に要指導薬やOTC薬をきちんと扱って頂かなければ始まらない」と嘆いている。



(2018年8月17日掲載)



前後のオピニオン

大きな力
(2018年8月24日掲載)
◆先送りされる大型成分のスイッチ化
(2018年8月17日掲載)
BS生産の担い手は
(2018年8月3日掲載)