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宮崎駿監督がアニメ映画「風立ちぬ」完成を最後に引退を表明した。多くのファンが「早すぎる、まだまだ感動的な作品作りを!」と残念がっている。 だが、その陰で「ヤレヤレ、これで一つ頭の痛い問題が消える」と、胸をなでおろしている団体がある。日本禁煙学会は、このアニメのなかの多すぎるタバコの描写について、制作会社のスタジオジブリに対し苦言を申し入れた。 教室や職場、病室などで次々と登場する喫煙シーンについて、「メディアによるタバコ広告・宣伝を禁止したタバコ規制枠組条約」に違反すると指摘。特に、肺結核で伏している妻の手を握りながらの喫煙描写は全く論外とし、学生が友人から〝もらいタバコ〟をする場面などは「未成年者喫煙禁止法」に抵触する、と強く批判した。 こうした過激な喫煙シーン作りは、超ヘビースモーカー・宮崎監督ならではの演出か。国際的にも国内的にも法律違反に当たる作品ではあるが、制作側はこれを全く無視。「私どもは、一切応えることはありません」と常日頃アニメに対する感想や批判にコメントしないという姿勢を貫いている。 しかも、一部社会的には「表現の自由侵害」論まででてきて、タバコ批判に関する賛否両論問題へと広がりをみせた。当事者の「風立ちぬ」の喫煙シーンについては、単なるいちゃもん事件で一件落着ということで終りそうである。 テレビや映画などの画面で憧れのスターがかっこ良くタバコを喫うシーンを目にすると、子どもたちが自然とタバコを手にするようになる。関連して医科領域に発展した研究成果は古くから数多く発表されていて、広告規制条約につながっている。 だが、タバコ会社も負けてはいない。ハリウッドスターのシルベスター・スタローンが、かって「ロッキーⅣ」などの主演映画で1本タバコを喫うごとに、タバコ会社から50万ドル(5千万円)の報酬を受け取っていたと告白した話も伝えられている。 「風立ちぬ」は、既にべネチア国際映画祭にノミネートされていて、禁煙学会によるクレームが一層人気化させる皮肉につながりそうである。 このアニメを見た青少年が、タバコを喫いだすきっかけにならなければよいが。
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