オピニオン
節目を迎えた日本保険薬局協会
日本保険薬局協会(NPhA)は5月15日に、定時総会並びに創立20周年式典を開催した。総会で挨拶に立った三木田慎也会長(総合メディカル代表取締役副社長)は、20年前の分業率は50%で右肩上がりの成長を描いていたことを述懐。処方箋を巡り、門前薬局間の熾烈な戦いもあったことを振り返った。また、記念式典で挨拶した日本薬剤師会の山本信夫会長は、医薬分業のけん引であるとその功績を称えつつ、「調剤専門薬局」との言葉を用い、専ら処方箋調剤に特化した業界であることに対して、薬剤師の職能団体として一定の距離感にあったことを滲ませた。ただ、日薬は近年NPhAや日本チェーンドラッグストア協会とも、友好関係にあることを改めて強調し、個別案件では意見の相違があっても、「薬物療法を提供する意味では大きな相違はない」との立場を訴えた。現在、国策として進められている医療DXに関しても、NPhAは業界を引っ張っており、電子薬歴やオンライン資格確認の導入など、チェーン企業の強みを活かし、各店舗で積極的な運用を進めている。同時に課題点なども会員企業からデータとして収集し、エビデンスをもった報告として、厚労省などに提供している。けん引役という意味においては、NPhAが特に貢献しているのはリフィル処方箋と言えるだろう。制度開始直後から、会員企業の実情を集めるとともに発信。遅々としている状況を“見える化”し、財務省の財政制度審議会においても実態を示す資料として活用された。あくまでも個人薬局の集まりである日薬との違いを、エビデンスで際立たせた格好だ。一方で、互いの特徴を活かした団体間の連携が進みつつあるなか、日薬とは是々非々の関係であることは、敷地内薬局に対して示された「グループ減算規定」案で浮き彫りとなった。敷地内薬局そのものには点数を上げる反面、その薬局を擁する企業全体の基本料を引き下げるという大胆なアイデアだ。これに対してNPhAは与党を中心としたロビー活動を展開。結果的に今改定での導入は見送られた。振り返れば、団体設立の背景には、調剤報酬の簡素化を掲げていたが、改定を重ねるごとにその方針とは程遠い細分化が進んでいる。組織の次の20年に向け、どのような立場でいるべきか。内外に発信する時期に差し掛かっていると言えよう。
(2024年5月31日掲載)
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