オピニオン

奇妙だった2人の光景

 席を並べた2人は何を考えていたのだろうか。コロナ禍の中、日本医師会の会長選挙が行われ、中川俊男副会長が現職の横倉義武会長を破り、会長職の重責を担うことになった。ただ、この選挙に至る重要なターニングポイントは5月26日だったのかもしれない。この日、日医は4月7日から発令されていた緊急事態宣言の解除に伴う臨時の記者会見を開催していた。そこには当時の横倉会長、中川副会長らが席を並べた。日医は原則として毎週記者会見を開くのだが、昨今のコロナ禍にあっては週に2回開催することも珍しくない。5月26日の会見は緊急事態宣言解除に関する日医の見解を横倉会長が述べたほか、松原謙二副会長、釜萢敏常任理事らがそれぞれの担当分野に関する説明などを行っていた。ところが、中川副会長のみ壇上に上がらなかったのだ。ただ静かに佇むだけだった。一方の横倉会長も、滲み出る疲労感を隠し切れず、会見中も目をつむり深呼吸をすることも度々あった。少なくとも記者個人は2人の醸し出す姿に違和感を抱いた。翌27日に一部報道で横倉会長が日医会長選に不出馬を周囲に伝えたことが明るみにでると、事態は急転し、選挙戦へとなだれ込み中川新会長が誕生することとなった。ただ、結果的に最後の同席となったのは、この奇妙な“ソーシャルディスタンス”会見であったことは、書き記しておきたい。



(2020年8月21日掲載)



前後のオピニオン

オフピーク
(2020年8月28日掲載)
◆奇妙だった2人の光景
(2020年8月21日掲載)
五輪の意義
(2020年7月31日掲載)