オピニオン

オフピーク

 東京メトロが車内モニターで放映する「オフピーク」の啓発広告が秀逸だ。通勤・通学時間帯をずらして混雑緩和を呼びかけるキャンペーン広告に登場するのは、ダンディ坂野と小島よしおのふたり。いずれも一世を風靡した(そしてすでに忘れられかけている)お笑い芸人が出演する広告のキャッチコピーは、「ピークを知る男」。ダンディ坂野が、「他人とずれていても、良いんじゃないですかね」と、さりげなく時差通勤・通学をアピールしたかと思えば、小島よしおにいたっては「揉みくちゃされて、毎日大変でした」と、売れっ子当時を振り返ったうえで、「あの頃はあの頃の幸せがあったけど、いまのほうが幸せかな」と、ピークを過ぎた現在の心境を語る。そして最後はふたりとも破顔一笑、「おれたちオフピーク」と締め括る。なかなかシニカルで、後を引く。
 さて、いささか無理があるのを承知で「オフピーク」を医薬品に当てはめてみると、「ピークを過ぎた」医薬品とは、特許が切れた長期収載品、そして後発品というところか。ただ、こちらは医療費抑制の波にも後押しされ、後発品数量シェア80%の政府目標達成も目前に迫るなど、決して「ピークを過ぎた」感はない。本紙インタビューで沢井製薬の澤井健造社長は「目標を達成しても、これが限界なのかといえば、そうではないと考える。まだまだジェネリック医薬品に変えられるところはある」と明言する。
 その一方で、武田テバファーマが、自社のGE医薬品の大半を同業の日医工に売却するなど、既存のGEビジネスの限界を指摘する声があるのも事実。薬価引下げや原薬高騰等のコスト増をいかに補うかも共通の課題としてある。その意味では、GE市場は踊り場にあるといえる。国内のGEメーカーが、海外進出やGEにとらわれない新規事業に着手し始めたのも、そうした背景を踏まえた動きだろう。
 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急財政出動等の影響を受け、国の医療費抑制圧力はますます強まることが予想され、そうなるとGEへの期待も一層高まるものと見られるだけに、各社の今後の展開が注目される。



(2020年8月28日掲載)



前後のオピニオン

安倍晋三首相の辞意
(2020年9月4日掲載)
◆オフピーク
(2020年8月28日掲載)
奇妙だった2人の光景
(2020年8月21日掲載)