オピニオン

「財政ファースト」改革の及ぼす影響

 2017年の新語・流行語大賞は「忖度」と「インスタ映え」に決まった。「インスタ映え」のようなまったくの新語とともに、使用頻度はあまり高くはないものの、どの辞書を引いても必ず載っている「忖度」みたいな昔からある言葉が選ばれたのはちょっと意外で面白かった(個人的には「都民ファースト」や「アメリカ・ファースト」などの「○○ファースト」、「フェイク・ニュース」あたりが印象に残っていたのだが)。
 さて、「インスタ映え」どころか、呆れるくらいに代り映えしないのが、引き下げ項目目白押しの薬価制度改革をめぐる議論。毎度おなじみの「財政ファースト」の改革メニューがずらりと並び、製薬業界の意向を「忖度」するつもりなど、誰もさらさら持ち合わせていないらしい。製薬業界の人々からは「願わくば、これはフェイク・ニュースであってほしい」という悲痛な叫びが聞こえてきそうだ。
 外資系企業を中心に特に反発が強いのが「新薬創出加算」の対象品目厳格化。厚労省も、当初案からは若干、要件を緩めて譲歩したが、すでに外資系企業関係者は「日本における上市戦略の見直しは不可避」「領域によっては日本は後回しという判断もある」などとした見通しを示す。また、国内試験数や新薬収載実績を問う企業要件は、「小規模メーカーを不当に差別することになる」との指摘もある。国内中堅メーカー関係者は「再編を促しているのか」と役所の真意を訝る。
 さらに長期収載薬の新たな引き下げルールは、国内中小メーカーを中心に、より大きな影響を及ぼしそうで、「撤退してもよい、というが、本当に撤退などできるのか」「そもそも長期収載品と後発品を同価格にしたら、淘汰されるのは後発品」と不安視する声が漏れる。何よりも「中間年改定も控えている。この先は、実質的に毎年改定を覚悟せざるを得ない」というのが関係者の本音だろう。



(2017年12月22日掲載)



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(2018年1月12日掲載)
◆「財政ファースト」改革の及ぼす影響
(2017年12月22日掲載)
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(2017年12月15日掲載)