オピニオン

患者がほしい情報は

 ちびまる子ちゃんの作者であるさくらももこさんが乳がんで亡くなられた。一部報道によると、さくらさんは民間療法を求めて全国各地をまわっていたという。川島なお美さんも小林麻央さんも、民間療法を行っていたとされている。
 がんに限らず、患者は民間療法に頼ろうとする傾向が強い。そんななかで思い出すのが、「日本アレルギー友の会」の荻野美和子さんの講演だ。アトピー性皮膚炎に苦しんでいた荻野さんは、一時期民間療法に走ってしまうが、信頼できる医師と正しい治療法に巡り合えたことで、現在では寛解を維持しているという体験談である。
 国立がん研究センターが発信している「がん情報サービス」では、いわゆる民間療法や代替療法と呼ばれる「補完代替療法」には「がんの進行を遅らせる、生存率を高める効果が証明され、治療法として勧められているものは現段階では1つもありません」と明言している。しかし、症状がつらい、治療がつらい、なかなか治らない。そうなると患者は「奇跡」を求めて民間療法に走ってしまう。とくに原因がわかっていない病気の場合に、その傾向が強いようだ。出口が見えず、苦しんでいるときに民間療法の「成功体験」を聞けば、すがりたくなる気持ちは否定できない。つまり、患者がほしい情報は「希望」なのだろう。一般向けに対する医薬品の情報提供は、非常に限定されている。民間療法に走る患者を減らすためにも、情報提供の在り方は見直す必要性があるのではと考えている。



(2018年9月14日掲載)



前後のオピニオン

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(2018年9月21日掲載)
◆患者がほしい情報は
(2018年9月14日掲載)
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(2018年9月7日掲載)