オピニオン

武田コンシューマーヘルスケアの譲渡

 武田薬品は8月24日、武田コンシューマーヘルスケアの全株式を、米投資ファンドのブラックストーンに譲渡すると発表した。ブラックストーンという名は今春くらいからよく聞こえてきていたが、武田薬品がコンシューマーヘルスケアを手放すという噂は、2014年のクリストフ・ウェバー社長就任当初からあったように思う。
 武田コンシューマーヘルスケア(TCHC)は、2016年4月にコンシューマーヘルスケア事業が武田薬品から分社化したわけだが、当時の杉本雅史TCHC社長は、TCHCが成長しているかぎりは大丈夫と話されていたことを思い出す。しかし、成長を続けていたTCHCも「ビオフェルミン」の販売移管を機に減収に転じ、杉本社長も2018年に突然の辞任。武田薬品の決算発表でもTCHCの業績は開示されなくなった。一方で、武田薬品はノンコア事業の売却を促進。この一連の動きから、TCHC売却も「時間の問題」と思われていた。
 ブラックストーンの坂本篤彦・プライベートエクイティ(企業投資)部門日本代表は9月3日の記者会見で「5~10年後の株式上場を目指す」と述べた。また、TCHCの売上はライセンス料や配当として「上納」していたこと、コンシューマーヘルスケアは「ノンコア事業」であったことから十分な投資を受けられなかったことが売上鈍化の原因とし、不足していた経営資源を提供すると述べた。TCHCの野上麻理社長は「今回の決定は非常に大きな変化であるとともに、非常に大きなチャンスである」と述べたが、この言葉が全てを凝縮しているように思われた。



(2020年9月11日掲載)



前後のオピニオン

薬剤師の卒後臨床研修
(2020年9月18日掲載)
◆武田コンシューマーヘルスケアの譲渡
(2020年9月11日掲載)
安倍晋三首相の辞意
(2020年9月4日掲載)