メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
医言放大
 
危機意識に欠ける性行動
 
   高校のPTA連絡会は、昨年度高校生一万人を対象に調査し、高三女子がなんと39%、セックス経験者であることを明らかにした。ちなみに男子は30%であった。
 多感な時期であるが故に、好き合った高校生同士が愛を語らい、時にはセックスまで進んでしまうのも仕方がないか、とも思う、この進化した時代では。
 男子高校生の相手は、そのほとんどが同じ高校生同士ということで、まだ可愛げがあるが、問題は女子。お相手が、男子生徒はもちろんのこと、社会人やフリーター、大学生等と多岐にわたる。当然のことながら、クラミジアや淋菌、さらにはエイズなどと性行為感染症の恐怖がぐんと高くなる。
 性行為時の感染予防で、一番シンプルで頼りがいのあるのはコンドームである。コンドームの利用は、本来は性的パートナー数が多くなればなるほど真剣に考え使用率が高くなるはずのものである。実際、欧米では当然この理にかなった利用方法が報告されているのであるが、我が国ではまるで逆。特定の相手とは使うが、不定期、不特定の多数相手とは使用しないときている。
 日本の若者は性感染症に対して危機意識が薄い、とみなされても残念ながら抗弁のしようがない。この傾向は困ったことに近年ますます強まっており、コンドーム出荷数の変動に明確にあらわれている。
 ‘93年以降、コンドームの国内出荷量は急減を続けており、‘93年の7億個弱が、‘03年には4億個強と約40%も減少した。ある高校の性経験率調査に於いては、初交時のコンドーム使用率が‘95年には75%あったものが、5年後の‘00年には50%に落ちこみ、まさに出荷量減少の実態をモロに反映している。
 先に開催された「アジア太平洋地域エイズ国際会議」では、日本の若者の間にエイズが侵入し始めていると警告があった。エイズは潜伏期間が長いので、気が付かないうちに感染が広まる危険性がある。ある日爆発的数字を記録なんてセンセーショナルな発表がないよう祈りたい。
 日本国の健全な成長のためには、何らかの予防的実効策が早急に打ち出されなくてはならない。国内のエイズ患者は確実に増加、累計では一万人を超えた。‘04年の年間新規は国内史上初めて千人を超えている。
 かつて、若者の間に朝シャンといわれる現象が流行したことがある。潔癖症的な一面を見せた時期であり、取り組みようによっては若者の心にうまくフィットする対策があるかもしれない。
 地ベタにペタンと座りこんで平気でいる姿をみていると、清潔好きなのか不潔人種なのか、若者の心を読むのは難しい。

(2006年2月24日掲載)
前後の医言放大
当直明けは酔いどれ診察
(2006年3月17日掲載)
◆危機意識に欠ける性行動
(2006年2月24日掲載)
映画の中の喫煙
(2006年2月17日掲載)