オピニオン

浸透しているか? がんの標準治療

 「私の治療が間違っているというのか!」――標準治療を行って欲しいと訴えた、ある女性のがん患者に、主治医が投げつけた言葉だ。
 腫瘍内科医不足、ドラッグラグや緩和医療など癌医療に関する課題は多いが、標準治療が浸透していないことも問題だ。状況によっては、標準治療が適用できない患者もいるだろう。標準治療に載っている医薬品(もしくは適応)が国内で未承認のケースもある。しかし冒頭のケースは、医薬品の制限は無かった。標準治療が適用できなければ、なぜ適用できないかを説明すべきであって、“逆ギレ”するのは論外だ。治りたいという患者の願い、気持ちを全く理解できていない。患者は患者会に相談したが、患者会とて医師に治療方針を変更するよう命じる権限は無い。都会ならば、セカンドオピニオンを取ったり、主治医を変更するという方法もあるが、地方では医師が足りず、そう簡単にはいかないという。患者会の人によると、結局、患者と医師の関係に行き着いてしまうそうだ。
 ある医師は、がんの専門医でない人でもがん患者を診なくてはいけなくなっており、そういう医師は標準治療や最新治療への理解が低いと指摘する。
 我々、患者(国民)としては医師に勉強して欲しいが、勤務医が激務なのも分かる。この状況はすぐには改善しないだろうが、患者の話を真剣に聞くことはできるはずだし、しなければならない。



(2008年2月29日掲載)



前後のオピニオン

医療従事者の安心
(2008年3月7日掲載)
◆浸透しているか? がんの標準治療
(2008年2月29日掲載)
クリントン候補が落胆した本邦医療制度の未来
(2008年2月22日掲載)