オピニオン

22年度改定と敷地内薬局

 次期調剤報酬改定を巡る議論で、医療機関が敷地内に薬局を開設・誘致する、いわゆる「敷地内薬局」のあり方が1つの焦点となっている。中央社会保険医療協議会の議論では診療・支払側ともに、より厳格な対応を求める認識で一致しており、「調剤基本料」だけでなく、「調剤料」や「薬学管理料」「薬剤料」でも引き下げを求める声があがったほか、薬剤師代表の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、「敷地内薬局」を持つグループ薬局全体の評価見直しも検討するよう提言した。
 「敷地内薬局」に対する医療界の見方は厳しい。患者の利便性向上には繋がるものの、医療機関からの経済的・構造的・機能的な独立を担保しにくく、重複投薬や相互作用などによる副作用を防ぎ、安心・安全な薬物治療を提供する医薬分業の趣旨が損なわれるとの懸念がある。中医協の現在の議論では、以前から問題視していた日薬だけでなく、日医や病院団体、保険者団体の委員からも、その存在に否定的な意見が続出するようになってきた。
 「敷地内薬局」を巡って厚生労働省はこれまでにも、特定の医療機関と不動産取引などの「特別な関係」をもち、その医療機関からの処方箋集中率が一定割合を超える薬局に対して、最も低い調剤基本料「特別調剤基本料」を適用する措置を講じてきた。それでも、「敷地内薬局」を開設・誘致する動きは後を絶たず、「特別調剤基本料」の算定薬局数の割合は19年度から3倍に拡大していた。
 有澤委員は中医協の会合で「調剤料や薬剤料を減算する。薬学管理料の加算に関する評価を下げる。あるいは算定不可にする。『特別調剤基本料』を算定する薬局を持つ同一グループに対しては、何らかの評価を低くするなどの見直しや検討も1つの方策」と主張。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は「(敷地内薬局を誘致する)医療機関と薬局のいずれもが院内処方と同様の取扱いとすることも選択肢の1つ」と発言した。診療報酬改定率を巡る激しい攻防が予想されるなか、「敷地内薬局」の評価見直しは、早くも1つの財源捻出策として捉えられている。



(2021年12月17日掲載)



前後のオピニオン

特例承認を振り返って
(2021年12月24日掲載)
◆22年度改定と敷地内薬局
(2021年12月17日掲載)
「少量多品種」からの脱却
(2021年12月10日掲載)