オピニオン

イノベーション政策の風

 昨年、政府の経済成長戦略大綱で、医薬品・医療機器産業の国際競争力強化が掲げられ、臨床研究基盤の整備・治験環境の充実、官民対話の積極的開催などが盛り込まれた。今年は、これらが実行に移る年となる。また、経済成長を重視する安倍政権の産業育成策「イノベーション25」でも、医薬品が成長を期待される分野の一つと位置づけられ、製薬業界は活気づいている。永山治・前製薬協会長が製薬産業論を唱えて以来、「ついに、この日が来たか」と感慨深いものがある。 製薬各社の社長の年頭あいさつでも、「日本発の国際企業」「革新的な製品を世に出す」「特色ある新薬開発」など、イノベーションを意識させる言葉が多く、これらの言葉を後押しする政府の動きに我々も期待が膨らむ。
 ただ、業界に追い風が吹いたとしても、誰もが等しくその恩恵を被るわけではないことに、注意が必要だ。製薬協の青木初夫会長は年頭所感で、「イノベーション政策が国の最重点課題に位置づけられたことは、イノベーティブな製品を継続的に創出できるか否かが医薬品が生き残っていく上での重要な要素であるとされた」と、語っている。つまり、創薬力が問われるということだ。青木会長は、今年最初の製薬協総会で、「(イノベーション重視の世界では)2年に1回みんなで団結して薬価(改訂の引き下げ幅)をおし戻すという状況ではなくなる。製薬協はインフラ整備に注力する」と語った。聞いていて身が引き締まる思いだったが、総会に参加していた各社の代表には、どのように聞こえただろうか。「いわずもがな」なら頼もしい限りだ。



(2007年1月19日掲載)



前後のオピニオン

暖冬の一話題
(2007年1月26日掲載)
◆イノベーション政策の風
(2007年1月19日掲載)
どちらに転ぶか“増税元年”の初詣
(2007年1月12日掲載)