オピニオン

薬価制度改革をめぐる攻防

 中医協での22年度薬価制度改革に向けた議論が本格化している。主な論点として挙がっているのは、薬価収載後に効能を追加した品目の改定時の取扱いや、医薬品医療機器等法改正で新設した「特定用途医薬品」「先駆的医薬品」に対する加算のあり方、原価計算方式での開示率向上、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の企業要件の見直し、「安定確保医薬品」のあり方、「市場拡大再算定」の類似薬の取扱い、「リポジショニング」の薬価算定の特例、「基礎的医薬品」の改定ルールの運用改善、新規後発医薬品の薬価算定、調整幅のあり方、高額医薬品への対応、診療報酬改定がない年の薬価改定(中間年改定)など。製薬業界側は特に革新的医薬品のイノベーション評価策の重要性を指摘し、「新薬の価値が適切に評価され、特許期間中は薬価が維持される仕組みが機能することが必須」として「新薬創出・適応外薬解消等促進加算の改善」等を求めている。
 これに対して財政悪化を阻止したい財務省は、薬価改定と薬剤費について、既存医薬品の薬価が下がっても、薬剤使用料の増加や新規医薬品の保険収載などにより、年平均で約2%増加していることで「経済成長率を大きく上回る成長をみせている」との認識を示すとともに、薬価改定による年平均2%の伸び率の調整を「マイナス改定と呼ぶことは適当ではない」とし、医薬品市場が縮小するような印象を与えることは「慎むべきである」と主張。そのうえで、毎年薬価改定の実現など、近年の制度改正の成果にとどまることなく、「もう一段の強力な薬剤費適正化の取組みが必要」と付け加え、製薬業界と真っ向から対峙する構えを見せる。
 9月に策定された「医薬品産業ビジョン」では、「投資に見合った適切な対価の回収」が重要との文言が記載され、また新型コロナ禍において治療薬やワクチン開発に対する期待も高まっている。製薬業界としてはこうした現下の情勢も追い風としたいところだが、やはり一筋縄ではいきそうにない。



(2021年11月26日掲載)



前後のオピニオン

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(2021年12月3日掲載)
◆薬価制度改革をめぐる攻防
(2021年11月26日掲載)
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(2021年11月19日掲載)