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分業のメリットを示すエビデンス

 「国民にとって医薬分業のメリットを、エビデンスによって示していかなければならない」(日本薬剤師会・児玉孝会長)――。「規制・制度改革に関する分科会」の下部組織である「ライフ・イノベーションWG」(WG)が取りまとめた改革案には、調剤基本料の一元化が提言されており、そこには「門前薬局の方が医療の質は高い」といった文言も明記されている。児玉会長は会見でWGの出した結論に対し、「診療報酬は医科・歯科・調剤のバランスも考えながら一体的に議論している。そこで何故調剤だけが出てくるのか理解できない」と強い口調で語る。ただ、"門前薬局"の経済効率性を評価する論調が、改革案に含まれている点に関しては、自戒の意を込めるようにして冒頭の発言を残した。
 児玉会長をはじめ、日薬がこれまでに主張してきた分業のメリットとは、大雑把に言ってしまえば、複数の医療機関から処方せんを応需し、OTC薬も豊富に取り揃え、持参した処方せん以外でも健康相談に携わるといった点にある。地域住民とも密接に交流し、在宅医療の問題も含めて地域医療に積極的に参加していく。そうした薬局を児玉会長は"リアルかかりつけ薬局"との言葉で表現する。
 しかし、そのような分業の理念が現在、国民に理解されているとはなかなか言い難い。調剤のポイントサービス問題と同様、国民生活者はやはり利便性に傾いていく。「懇切丁寧な服薬指導」はもはや分業率が6割を超えている以上、薬局にとって当然の責務となった今、「医療は効率化だけでは語れない」(児玉会長)と主張する以上、後発医薬品への更なる取り組みや在宅医療への積極的な参加など、国民にとって分かりやすいかたちで、エビデンスとして提示していく必要がある。



(2011年1月14日掲載)



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