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判断のものさし

 厚労省は4月、扶桑薬品、大塚製薬工場、テルモ3社が3月に自主回収していたヘパリンナトリウム製剤について、品質管理などを徹底した上で、実際に現場で使うことを「可」とすることを決めた。厚労省の部会では、企業が供給再開するにあたっての条件として、不純物が含まれていないかロット毎に検査を行うよう指示。また、医療関係者に対しても、十分に注意して使うよう注意喚起を図っている。
 ことの発端は、今年1月に始まった米国におけるバクスター社のヘパリンナトリウム製剤の自主回収にある。昨年12月以降、製剤の投与後にアレルギー反応などの副作用を起こす患者が増加。因果関係は不明だが、製剤の原薬から不純物が検出されており、同じ原薬製造所を使っていたとして、3社は国内の自主回収を決定した。つまり「予防的な措置」として、今回の対応に踏み切ったというわけだ。
 ただ部会では、「予防的な回収」という企業の対応に「現場に混乱をきたしている」との声が続出。透析に使われるヘパリン製剤の約半分が自主回収の対象となった今回の措置。実態を考えれば、「予防的な措置」として、果たして回収する必要があったのかどうか。さらには、自主回収しているのに、「代替品がなければ患者に説明した上で使ってもよし」とする曖昧な対応が、かえって医療現場を混乱させたとの意見も数多く出た。
 もちろん、薬の安全性が担保されなければ患者に使うことなど出来ない。ただ、「現品交換でいいのに、回収しているケースも最近よく見る」(医療者)という現状。医療実態を踏まえたリスク回避をどうすべきか。偏った判断はかえって患者の負担を強いることになる。



(2008年5月9日掲載)



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(2008年5月16日掲載)
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(2008年5月9日掲載)
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(2008年4月25日掲載)