オピニオン

めくるめくマネーワールド

 浮き沈みは浮世の常とはいえ、上がったり下がったり、何ともめまぐるしい世相である。暫定税率をめぐるすったもんだのあおりを受け、ガソリン価格は下がったかと思えばまた上がり、後期高齢者医療制度の保険料は、当初の厚労省の発表では大部分が下がるはずだったのに、蓋を開けてみれば負担増となる人も少なくないとか。そうかといって、上昇(下降)したきりというのも困りもので、支持率下がりっ放しの福田政権などはさぞかし苦りきっているに違いない。
 ところで昨今、原油価格と並んでもっとも鋭い上昇曲線を描いているのは、恐らく食料価格だろう。コメや小麦、大豆、とうもろこしなどの価格は世界中で高騰し、途上国では食料不足から暴動にまで発展するという深刻な事態を引き起こしている。主要農業国での不作もその一因として挙げられているが、直接の端緒となったのは、穀物のバイオエネルギーへの転化による価格高騰を見込んだ投機マネーの市場流入と言われている。「食料では喰っていけない」とばかりに穀物を買い漁る傍若無人を誰も止めることができない。いまやマネーは全能となったようだ。しかし、「何でも可能な時代に生きることは恐ろしい。あらゆる犠牲も低く評価されるのだから」(レイナルド・アレナス「めくるめく世界」)。
 それで思い出したのだが、昨年来、国内製薬企業の経営トップクラスの面々から「畑用に土地を買った」という声をよく耳にする。「将来、日本は確実に食料危機に陥る」と断言する方までいた。ちなみに日本の食料自給率は、主要先進国ではダントツに低い約40%である。



(2008年5月16日掲載)



前後のオピニオン

オペレッタ「登録販売者試験の憂鬱」
(2008年5月23日掲載)
◆めくるめくマネーワールド
(2008年5月16日掲載)
判断のものさし
(2008年5月9日掲載)