オピニオン

高齢社会で増える疾患によるQOL低下を防げ

 高齢社会の進展に伴い患者数増加が予想される疾患のひとつに、加齢黄斑変性症(AMD)がある。網膜の中心付近の黄斑部分に障害が生じる疾患で、最初は視野の中心付近がゆがんだり、暗く見えたりするが、進行すると失明することもある。日本における患者数は疫学研究の結果から約70万人と推定されているが、最新の薬物療法を受けているのはその5%にも満たない。この疾患は加齢が大きなリスク要因であり、潜在患者数はさらに増える可能性がある。放っておくと失明につながるだけに、怖い疾患だ。しかし、なぜこんなに治療している人が少ないのだろうか。
 AMDの疾患啓発を行っているAMDアライアンス・インターナショナルは先日、AMD患者から自分の顔を鏡で見た時にどのように見えるかを直接聞き取り、その情報を基に見え方を再現した肖像画展を、東京・巣鴨で開いた。疾患の認知度向上のためだ。
 AMDに罹患しているかどうかのセルフチェックには、方眼紙のようなマス目を見て直線部分がゆがんで見えるかどうか、と簡単な方法がある。歪んで見えた場合は、専門医を受診すべきだ。患者の視界を再現したマス目を見ると、「気づかないわけがないと」思うほど異変は明らかだ。患者はなぜ病気に気づかないのか? AMDアライアンス・インターナショナルに話を聞いたところ、老化とあきらめている人もいるようだが、「片目に病変があっても両目で見た場合、見えるほうが視界を補ってしまうため気づきにくい」とのこと。高齢者には、定期的に片目でマス目を眺めてチェックすることを勧めたい。失明という悲劇を招かないために。



(2010年12月17日掲載)



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雑食系おじさん@クリスマス
(2010年12月24日掲載)
◆高齢社会で増える疾患によるQOL低下を防げ
(2010年12月17日掲載)
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(2010年12月10日掲載)