オピニオン

次の国民皆保険・皆年金にむけて

 国民皆保険・皆年金が実現した1961年から今年で50年。8月に発表された2011年厚生労働白書は、50年前との変化を「100人でみた日本」で示している。それによると、15歳未満が29.8人から13.1人へと減少したのに対して、65歳以上は5.8人から22.9人へと増加。市部の人口は63.3人から86.3人へと増加し、世帯数も22.4世帯から39.1世帯へと増加した。少子高齢社会と、世帯の個人化が進んでいることがはっきりと現れている。
 白書では、「国民皆保険は日本人の平均寿命の伸びに大きく貢献し、国民皆年金は長くなった老後生活の支えとなった」と評価しているが、産業構造、人口構成、疾病構造が50年前とはまったく変わってしまった。それにあわせて社会保障も変化しなければならない。
 社会保障の今後の役割について白書は、雇用の不安定化、単身世帯増大、地域の結びつきの希薄化から、「将来の生活への不安に加え、個々人の帰属意識、言いかえれば自らの“居場所”や“こころの拠り所”があるという安心感の動揺をもたらしている」と指摘。「それらを克服することを目指す」との決意を示している。そこで、打ち出したのが「本人の能力を最大限に引き出し、労働市場、地域社会や家庭への参加を促す」とした、「参加型社会保障(ポジティブ・ウエルフェア)」の概念だ。対象者を保護するだけではなく、公、NPO、企業等が連携して、社会復帰を後押しする考えだ。実現には、さまざまな議論と制度変更が必要だろう。今後の社会保障のあり方は、「復興」「エネルギー政策」同様に重要課題のはずだ。リーダーになる人には、ビジョンとビジョン実現への道筋を示してほしい。社会保障改革論議を、消費税増税問題に矮小化してはならない。



(2011年8月29日掲載)



前後のオピニオン

ペットにも人にも優しくできるか
(2011年9月9日掲載)
◆次の国民皆保険・皆年金にむけて
(2011年8月29日掲載)
灰から灰へ、塵から塵へ
(2011年8月26日掲載)