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3年前のこと、沖縄の航空会社の副操縦士が飛行中、腹痛を起こし、本来は乗客用に常備されていた胃痛薬を服用、無事に乗務を果すことができた。 何の問題もないと思われたこの行動が、後に航空法違反で厳重に注意されるという事態に。 理由は、胃腸薬の中に、国土交通省の指針として、飛行機の乗務時に服用してはならない生薬が含まれていたからである。 生薬は、極めて多くの種類が市場に出回っているが、その代表的なものの1つに麻黄がある。その主要成分はエフェドリンであり、風邪の初期に使用する葛根湯や、アレルギー性鼻炎によく用いられる小青竜湯など多くの漢方薬が有効成分として広く活用されている。 また、エフェドリンは中枢神経興奮作用があり、スポーツ界ではドーピング注意薬としてもよく知られている。 実際、この成分入り感冒薬の服用により、シドニーオリンピック・女子体操個人総合優勝者であるルーマニア選手が、金メダルを剥奪された可哀相な事件が起きている。 生薬は、主要な成分については分析され把握できているが、その他多くの混入しているであろう微量成分については検出不明、確定不明であり、それが西洋薬との決定的な違いであり欠点となっている。 つまり、何が含まれているか解らない、それでどんな有害作用が起きるかも知れない生薬に対して、国土交通省航空局技術部が超神経質な判断により、生薬と名がつく限り、これを航空乗務に使用してはならないと規定している。 スポーツ選手が、個々の自己責任レベルで対処できるのと異なり、パイロットは何十人何百人の命を預り操縦するわけだから、最大限厳しい規定がされていても致し方がない。 実際の尿検査では、エフェドリン濃度としてわずか10μg/mlで陽性とされ、1回量の風邪薬や漢方薬の服用で十分その濃度に達する。どうしてもそれを服用せざるをえない場合があっても、少なくとも検査の3日前には服用を中止し、体内から排出しきってしまう必要がある。 ドーピング対策として、スポーツ界ではチームドクターの存在がよく知られているが、ほかに、さらなる上級資格者としてスポーツファーマシストと呼ばれる認定人がいる。 スポーツ選手には、よほどの必要性がない限り、一般の薬物をはじめ未知の健康食品の摂取も控えさせられている。
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