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「世界最高級の“おもてなし”をお約束します」という決めぜりふで、2020年の東京オリンピック誘致に成功した日本ではあるが、気掛かりなことが1つ。 バルセロナ、アトランタ、シドニー、アテネ、北京、ロンドンといったこれまでの歴代開催都市が、全て罰則付きの受動喫煙防止法又は条例を整備していたが、日本では或いは東京都では、罰則までの整備をすることが難しい情勢にある。それでは、折角のおもてなしの精神が反故になりかねない。 WHOの評価では、日本の受動喫煙対策は常に最低ランクにあり実に情けない。 この問題を最高に危惧する舛添知事は、次のように慨嘆している。「食事中にタバコを吸っていいですか、と無神経なことを言うのは日本人ぐらい。和食は素晴らしい日本文化だが、タバコの匂いで繊細な味合いが損なわれる。飲食店での喫煙が可能では先進国ではない。」 受動喫煙として問題となる副流煙は、主流煙以上に有害物質が含まれ、受動喫煙防止対策が、国内外で問題視されている。 わが国における受動喫煙死は、国立がん研究センターの推計で、年間約2万人にのぼるとされている。 さらに、夫が喫煙者の場合、同居する非喫煙女性の肺腺がんリスクは2倍近くになる。だが、もし受動喫煙を避けられれば、そうした女性の37%は発病を防げたと報告している。つまりは、夫による長期的殺傷行為とも言えるのである。 喫煙者は家庭内に留まらず、職場その他多くの場所で受動喫煙に関わっており、多くの人へ悪影響を及ぼしている。 タバコは多くの疾患のリスクを上昇させ、甚大な経済的損失を産みだしている。1990年時点でのタバコ税などの収益は約2・8兆円であったが、関連疾患などの社会的損失は約5・6兆円にのぼり、差し引き約2・8兆円の損失となっている。 中国で、いま社会問題化しているPM2・5はタバコの燃焼でも発生する。飲食店内で、自動ドア仕切りの喫煙区域内のPM2・5濃度測定を実施した厚労省調査では、汚染のひどい日の北京市内に匹敵するということで、実に深刻な課題である。
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