オピニオン

「オリンピック」と「ネキシウム」

 平昌では連日、熱い戦いが繰り広げられているが、同じ「オリンピック」でも、こちらのいわゆるオリンピック方式はいささか評判が悪い。「新薬創出加算」の「品目要件」のことだ。相対評価で予見性が低いとされる「企業要件」ともども、「収載3番手までを加算対象とする」新たなルールをめぐっては、欧米の製薬団体からすでに「ドラッグラグの再燃」を危惧する批判の大合唱が上がっている。
 他方、製薬協の畑中好彦会長は1月の会見で、研究開発は製薬企業にとって「ビジネスモデルの源泉であり、手を抜くことは考えにくい」とし、「軽々にラグが拡大するとは、私自身は考えていない」と明言した。内外の企業で見方は食い違うが、どちらに振れるのか、現時点では何とも言えない。
 ひとつ、興味深いケースがある。18年度改定で「特例拡大再算定」の対象となったネキシウムである。厚労省内でも「PPIで1000億円超の売上は驚異的」と驚きの声が漏れたというが、それもそのはずで、11年の薬価収載時のピーク時予測は「9年度目に527億円」。予想を上回るスピードで、倍近い売上を達成したことになる。しかも同剤は「類似薬効比較方式Ⅱ」での算定。つまり「薬理作用類似薬が3つ以上存在する」新規性に乏しい新薬の扱いだった。海外では常に売上トップ10の上位に顔を出す大型製品だったが、国内では競合のパリエットやタケプロンからかなり遅れての参入となったためで、薬価も比較薬のパリエットとは同価格だったものの、最類似薬のオメプラゾールよりも低かった。この点については当時の中医協でも「オメプラゾールを改良したものなのに、価格が同剤を下回るのはどうか」との意見もあった。ともあれ、要因は様々あるにしろ結果的には大型製品となったわけだ。
 偶然とは言えこのケースと、欧米製薬団体の主張を重ねてみると、ひとつの可能性が透けて見える。「3番手以内に入れないのならば、上市が遅れたって構わない」。そう考える企業が現れたとき、果たしてそうした「戦略」を一方的に責めることができるだろうか。



(2018年2月23日掲載)



前後のオピニオン

学会の注意喚起
(2018年3月2日掲載)
◆「オリンピック」と「ネキシウム」
(2018年2月23日掲載)
日医君考
(2018年2月16日掲載)