オピニオン

疾患啓発プレスセミナーの効用

 先日、眼科検診を受けた。特別な自覚症状があったわけではなく、区の受診料補助により自己負担300円で受けられるというので、軽い気持ちで受けに行った。対象は45歳と55歳の区民。加齢による眼疾患の代表格でもある緑内障の早期発見と予防が主な目的であり、要するに自分には関係ないものと高を括っていた。だから、「緑内障の疑いあり」と言われて正直、かなり焦った。「眼圧は正常だが、緑内障の症状によく似た症状が出ているように見えるので、心配ならば眼底写真を撮って、もう少し詳しく調べたほうがよいでしょう」。ただし、今度は区の補助はなく、また、強度の近視でも似た症状が出るので緑内障とは断定できませんが、とのこと。もちろん、心配なので眼底検査も受けた。結果、「現時点では問題なし」との診断がくだりほっと胸をなでおろしたわけだが、今後も定期的に検査を受けて経過観察すべしとの忠告をいただいた。
 ファイザーがインターネットを通じて「緑内障治療のための点眼薬を処方されたことがある人」を対象に行った調査によると、緑内障の点眼治療を「自分の判断で中断している」あるいは「中断した経験がある」人は18.7%。中断した理由でもっとも多かったのが、「大した症状がなく、日常生活で特に困っていなかったから」で、半数近い44.6%にのぼった。一方で、治療中断者の42.9%は「治療を中断すると視野欠損が進行する可能性がある」ことを理解していれば「中断しなかった」と回答しているという。仕事柄、メーカーや学会主催のプレスセミナーに足を運ぶ機会は多いが、疾患啓発の大切さに改めて気付かされた思いである。と、いかにももっともらしく書いたが、何を隠そう眼科検診を受ける気になったのは、その直前に、前述の緑内障プレスセミナーを受けていたからであり、そうでなければ「面倒」とか何とか理由をつけてみすみす検診機会を逸していたに違いない。プレスセミナーの恩恵をもっとも受けていたのは我々プレスだったわけだ。



(2012年11月9日掲載)



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