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「保険給付範囲の見直し」
 
   次期薬価制度改革に向けた検討課題のひとつとして挙げられている「高額薬剤」の問題を端緒に、「保険給付範囲の見直し」が、またぞろ、クローズアップされている。
 財務省・財政審は先ごろ公表した建議で、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」との考え方に基づく保険給付範囲のあり方の見直しを提言。高額薬剤の登場などに伴う医療費増加といった「大きなリスク」には保険収載の可否も含む対応を求め、「小さなリスク」については、薬剤の種類に応じた保険給付率の設定や、OTC薬と同一の有効成分を含む医療用医薬品の保険給付のあり方の見直し等、薬剤自己負担引上げの必要を指摘した。
こうした考え方に保険者団体も同調。健保連および協会けんぽは5月の会見で「薬価制度の抜本改革で高額な医薬品への対応が行われたが、薬価制度上の対処だけでは限界がある。医薬品の保険給付範囲のあり方を根本的に見直す時期に来ているのではないか」と訴え、まずはOTC類似薬の給付除外に向けた検討に着手するよう求めている。
 もっとも、財務省が誘導する「高額薬剤が医療費を押し上げる」としたロジックや、支払い側が主張する「薬価制度上の対処だけでは限界がある」との見方には議論の余地もありそうだ。例えば調剤レセプト分の集計によると、C型肝炎治療薬の薬剤料は、15年度の3299億円から、薬価引下げ影響等により、17年度には1061億円まで低減。その後もがん免疫療法薬などの「高額薬剤」が続々と上市され、「医療保険財政の危機」を煽る声も高まったが、複数回の薬価引下げが政策的に断行されるなどした結果、直近の医療費統計では、18年12月時点の概算医療費の伸びは前年比0.9%増の微増で推移している。医療費に関しては、薬価引下げ単独の効果ではないが、「薬価制度改革も医療費抑制に十分貢献している」と判断するか否かで、現状に対する評価は分かれる。いずれにしても、保険給付範囲の見直しは、「高額薬剤=医療費増加」という短絡的な印象に惑わされず、長期的かつ多様な視点からの議論が必要とされる。

(2019年6月28日掲載)
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