オピニオン  
 
白い呪術師逝く
 
   ニューオーリンズ出身で6度のグラミー賞を受賞したミュージシャン、白い呪術師≠アとドクター・ジョンが6月6日に鬼籍に入った。享年77歳だった。彼の代名詞といえば、しゃがれたダミ声に、跳ねるようにリズミカルでパワフルなピアノ。ブルース、ジャズ、ファンク、ロックなど多様なジャンルを取り入れた音楽はまさに唯一無二で、筆者も初めてアルバムを聴いた時はかなりの衝撃を受けた覚えがある。
 ドクター・ジョンの名は、19世紀のブードゥー教の司祭から採ったもので、活動初期の頃はサイケロックと神秘主義的な歌詞を組み合わせた、特異な音楽で人気を集めた。妖しくおどろおどろしいそのスタイルは、白い呪術師と呼ばれるほどだった。
 ドクター・ジョンは多くの傑作を生みだしたが、あえて1つ挙げるとすれば、1972年にリリースし、ニューオーリンズ・ミュージックを世界に知らしめた不朽の名盤「GUMBO(ガンボ)」だろう。かつてフランス領だった港町ニューオーリンズにはあらゆる人種が集まり、ジャズを始めとした独自の音楽が形成された。「ガンボ」でドクター・ジョンは、この街が生んだ名曲の数々を現代的なアレンジを用いてカバー。初期の作品とは違って聴きやすく、間口の広いものとなっている。
 「ガンボ」は、日本も含め世界中のミュージシャンに多大な影響をもたらし、アメリカン・ルーツ・ミュージックの再発見にもつながった。2011年にドクター・ジョンは、ロックの殿堂入りを果たしている。今後も誰もが手に取るべき偉大な作品として、聴き継がれていくはずである。

(2019年6月21日掲載)
前後のオピニオン
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(2019年6月28日掲載)
◆白い呪術師逝く
(2019年6月21日掲載)
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(2019年6月14日掲載)