オピニオン
A・RA・SHI
私がバレーボールの記者であったころ、バレーボールの観客動員のためにジャニーズ事務所のアイドルを起用するというメディアのやり方に疑問をいだいていた。バレーボールの試合だけでは観客は集まらないという現実はあった。しかし、試合開始前のセレモニーでアイドルがイメージソングを歌い終わったあと、それを目当てに来たアイドルファンたちは試合中に居眠りをしているということが珍しくなかったのだ。
「嵐」がワールドカップのイメージキャラクターを務めたとき、その疑問が少し薄らいだ。イタリアやブラジルの選手たちが「ARASHI~ARASHI~」と歌いながら、楽しそうに踊っていたのを見たのだ。そのときに、スポーツも音楽も国境を超えるものだということを実感した。そしてワールドカップ自体も、たいへんに盛り上がったのを覚えている。嵐がその盛り上がりに大きく貢献したことは間違いない。また、嵐は「春の高校バレー」にも登場した。開幕式で嵐が歌う姿を、高校生選手たちが目を潤ませて見ていたのを思い出す。選手たちが楽しんでいるなら、大会が盛り上がるなら、選手のモチベーションにつながるなら、別にいいかと思ったのだ。
そんな嵐など、数多くのトップアイドルを生み出したジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長の訃報を聞いた時、こんなことをふと思い出した。ちなみに当時、嵐の取材はしていなかった。目の前を普通に歩いたりしていたのに、大変惜しいことをしたものだ。
(2019年7月19日掲載)
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