オピニオン

ICTインフラの遅れ

 私はマイナンバーカードを保有していたこともあり、コロナ対策として国から給付される特別定額給付金は、わりとすんなり振り込まれた。しかし、ニュースなどを見ると、私のようなケースは例外だったようだ。システム障害などが起こり、オンライン申請の受付を停止した自治体もあった。いまだに給付されていないという人も少なくなく、社会問題ともなっている。
 今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって、浮き彫りになった日本の課題の一つが、ICTインフラの遅れだ。医療機関が、新型コロナウイルスに感染した患者を保健所に報告する方法がFAXであったことも話題となった(そういえばセミナーや会見の申し込みもいまだにFAXが多い)。さらに、感染拡大に伴う臨時休校が長引くなか、各学校はオンライン授業を順次取り入れようとしたが、それが可能となったのは一部の学校にとどまったようである。
 一方、理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳」が、性能を競う世界ランキングで、計算速度など4つの部門で世界一となった。つまり、日本の技術力・開発力は世界トップクラスだが、その技術力が一般国民レベルにまで下りてきていない。いや、基盤が弱いために下りてこられないというべきか。国は、超スマート社会「Society 5.0」の構築を打ち出した。おそらく実現する技術力はあるのだろう。しかし、国民全員が享受できるインフラの整備が必要だ。普及率16%のマイナンバーカードによる給付がうまくいかないようでは、先は暗い。



(2020年7月10日掲載)



前後のオピニオン

日医・中川新会長の手腕
(2020年7月17日掲載)
◆ICTインフラの遅れ
(2020年7月10日掲載)
電話医療通訳サービス事業
(2020年6月26日掲載)