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「人は笑う動物である」とアリストテレスは言った。どうも、神様は、動物の中で人間だけにしか笑う特権を与えなかったようだ。 そして、笑うことが自由自在にできる人間が、最高に優れた動物として、この世に君臨することを許されたのである。 こうしてみると、我々が日頃ごく当たり前のようにズッコケ笑い転げている普遍的日常行為について、一歩立ち止まり、その意義、大切さについて一探りしてみたい、と思った次第。 我々は、有害なものを口に入れたな、と思った時は、本能的に瞬間的に外へ吐き出そうとする。この時「ゲー」と吐き出す動作をするが、これがそもそも笑いの原点なのだ、と動物学者ヤン・ファンホーフ氏(オランダ)は推論する。有害なものは笑って外へ吹き飛ばしてしまおうというわけである。 我々の体の仕組みは、精神的不快を感じると、交感神経が優位となり、血圧はピンと跳ね上がり、脈拍はドキンドキンと脈打つ。ドーパミン、アドレナリンなどで代表されるカテコールアミンが大量に分泌されるからだ。これらは猛毒であり、体に長く留めておくのは極めてよろしくない。 そこで、我々の祖先は有力な消滅方法をあみだした。「笑いによる追い出し法」である。 「笑い」はまさに運動そのもの。腹筋をギューと締めたり緩めたり、横隔膜を上げたり下げたり激しく呼吸する。この運動により、カテコールアミンがどんどん消去されていくのだ。同時に身心は徐々に正常化していく。 こうして、体にふりかかってきた強いストレスは、笑いによりスッキリ取り除かれる。この働きは、まさに不愉快から自己を守る「生体防御機構」の1つと考えられる。 恰も、鼻腔やのどに貼り付いたかぜウイルスを、“くしゃみ”や“せき”で外へ勢いよく吹き飛ばす、この体の本能的仕組みは、まさに“笑い”の効果と相通ずるもの。 こうしてみてくると、笑いの少ない人は、どうしても有害物質カテコールアミンが体に溜まりやすく、なかなか外に抜けきれない。そのうち体の弱いところが狙い打ちされ発症ということになってしまう。 笑いが健康によい、という事例は今や山ほど発表されており、全く疑う余地はない。 時に交感神経が優位状態になるのは、この厳しい時代はやむを得ないこと。だが、早めはやめに笑いのテクニックで、副交感神経優位状態に戻し整える術を身につければしめたものである。
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