オピニオン

女性活躍、OTC、外資

 7月に投開票が行われた参議院選挙では、日本薬剤師会の組織内候補である本田顕子氏を筆頭に、過去最多タイの28人の女性当選者が生まれた。また、同時期に選考が行われた19年度上半期の芥川賞・直木賞は、両賞ともに女性作家が受賞、直木賞にいたっては、史上初めて候補者6人全員を女性が占めるなど、女性の活躍は止まるところを知らない。
 製薬業界でも、いまや女性社長は珍しくない。本紙8月9日号にインタビューが掲載された武田コンシューマーヘルスケアの野上麻理社長もそのひとり。社内の評判は上々で、特にキャリアアップを目指す女性社員のロールモデルとしてリスペクトを集めているという。そればかりか、実は社外(同業他社)からも称賛の声があがっているそうで、長くOTCメーカーのトップを務めた業界の大御所も太鼓判を押したとか。
 しかし、そのような優秀なトップを頂く同社ですら、「身売り」の噂は絶えない。野上社長は本紙インタビューで、「クリストフ・ウェバー社長CEOから『日本のコンシューマヘルスケアビジネスは売らない』との説明を受けた」と語っているが、武田薬品がノンコアビジネスを売却対象として挙げているのも事実だ。
 折りも折り、同業の売却話が明るみに出たばかり。しかも、買い手候補として名前が挙がったのは外資系企業ばかりという点も両社に共通する。OTC市場は「医療用医薬品のように特許切れで売上が急に落ちるというビジネスモデルとは違い、市場ニーズさえつかめば、右肩上がりを長期的に持続できるタイプのビジネス」(野上社長)であるといっても、現実には、医療用医薬品市場ほどの収益を期待するのは困難。あくまで長い目で根気よく、自社ブランドの育成を図る必要がある。鍵はビジネスの継続性と持続性。数値目標重視のビジネスライクな外資系スタイルとは相容れないのではないかと考えるのは、頭が古いせいかも知れない。が、「国産OTCブランドは国内メーカーの手で」というのもまた、関係者の抱く自然な心情ではないだろうか。



(2019年8月30日掲載)



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(2019年8月30日掲載)
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(2019年8月23日掲載)