オピニオン

大逆転

 1か月半にわたって日本列島を席巻したラグビーワールドカップは、南アフリカの3度目の優勝で幕を閉じた。予選プールで黒星を喫したチームの優勝はW杯史上初めてのことだ。南アフリカは初戦で、大会2連覇中のニュージーランドに完敗したものの、そこから見事に立て直し、決勝トーナメントの準々決勝では、4連勝で初のベスト8進出を決めた日本を圧倒、決勝戦でもイングランドを下し、黒星スタートから一転して頂点まで駆け上った。スポーツに逆転劇はつきものだが、同国に唯一、土をつけたニュージーランドが準決勝で敗退したのとは対照的な結末となった。
 プロ野球でも、シーズン優勝を逃したソフトバンクホークスがクライマックスシリーズを勝ち抜け、そのまま波に乗ると日本シリーズではあれよという間に読売ジャイアンツに4連勝。不運にもラグビーW杯と時期が重なったせいか、いまいち盛り上がりを欠いた感は否めないが、昨年に続きシーズン2位から逆転で日本一を勝ち取った。
 さて、製薬業界でも予想外の逆転劇がちょっとした話題になった。3月にいったん、試験中止が決定していたバイオジェンとエーザイが開発中のアルツハイマー(AD)治療薬に関して、新たなデータ解析の結果、主要評価項目を達成したとの発表があったのだ。試験中止後に利用可能となった大規模データセットにおいて、高用量投与群の解析が拡大したことで良好な結果が確認されたという。業界内でも「過去にあまり聞いたことのないケース」と驚きの声が漏れる。さらには、これまで同じようにAD治療薬の開発中止に追い込まれたり、断念を余儀なくされた企業も「試験デザインの変更等で追随するのではないか」との見方まででている。暗雲が垂れ込めていたAD治療薬の開発環境を一変する「大逆転」のきっかけとなるかも知れない。



(2019年11月22日掲載)



前後のオピニオン

買ったものの評価
(2019年11月29日掲載)
◆大逆転
(2019年11月22日掲載)
市場はどう見るか
(2019年11月15日掲載)