オピニオン

市場はどう見るか

 「新薬候補について株式市場にあまり理解されていないのではないか」――。武田薬品の決算会見で、クリストフ・ウェバー社長のこの言葉が印象に残った。シャイアーの買収を発表して以来、同社の株価は下落傾向にある。
 一方で同社は、非重点領域の売却を進め5845億円の負債を返却し、純有利子負債・調整後EBITDA倍率が2018年度末の4.7倍から3.9倍に減少させた。財務の改善に注力した結果、ここ最近の同社の株価は上昇傾向にある。ウェバー社長も「19年度に予定していた負債は上期に繰り上げて返済した。統合作業は全く問題ない」と強調し、「統合によって事業の勢いは失われなかった」と自信をのぞかせた。ただ、膨張した負債はなお5兆円を超えるのも事実で、これをどう減らしていくかは大きな課題である。まだ市場の評価は定まっていないと言わざるを得ない。
 そのことを意識したのが冒頭の言葉なのだろう。結局のところ、市場の関心事は、買収によって強力な新薬を創出できるかの一点だ。同社は新薬候補について説明する「R&Dミーティング」を米国で11月14日から開催し、市場に買収の意義を強調している。シャイアー買収によって、希少疾患の治療薬などを獲得し事業規模は大幅に拡大した。今後は取得したパイプラインを具体的にどう新薬開発に結び付けられるのか。主力品の特許切れにも直面するなどの課題がある中、改めて統合後の成長戦略に大きな注目が集まっている。



(2019年11月15日掲載)



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