オピニオン

きっと、うまくいく?

 公開中のインド映画『きっと、うまくいく』を観た。原題は“3 idiots”(三馬鹿トリオ)とのことで、一言でいえば大学生が恋愛・学業・就職活動に奮闘する学園コメディーなのだが、これが良く練られた物語で最高に面白かった。また、昔ながらのインド映画のようで、エリート学生の自殺増や、職業選択の不自由(カースト制度の国なので)など、社会問題に対する視点も垣間見える辺り、モダンなセンスも印象に残る作品だった。
 さて、これも時代の流れなのか、映画の中では、主人公と成績トップの座を争うライバルの通称“サイレンサー”が、熾烈な競争を勝ち抜くため、記憶力などを増強するスマート・ドラッグを常用して勉学に勤しんでいたのが印象的だった(銘柄や成分は不明)。ただしその薬が彼に与えたものはといえば、ドーピングも辞さぬズルい奴、薬の副作用で臭いすかしっ屁ばかりしている(故にサイレンサーと呼ばれる)道化者、といったネガティブなキャラ設定ばかりで、結局、真の栄光を手にすることはないのは言うまでもない。
 一方で、多剤併用やオーバードーズなどにより何らかのバチが当たることもなく、彼の卒業後の人生がそこそこうまくいく、というのは意外な展開だった。スマドラ自体にそれほど重要な意味づけがなかっただけのことかもしれないが、物語の基調が明快な場合が多いインド映画においては、分かりやすい懲罰フラグと思えて仕方がないところだった。
 しかしそう思うのは日本人ならではの発想で、実はインドのエリート層においてスマドラは珍しいものでも何でもなく、特段の問題も見られていない、ということなのかもしれない。日々のニュースからは知りえないことだが、実態が気になるところだ。



(2013年8月9日掲載)



前後のオピニオン

ネット販売のルールを巡る議論再び
(2013年8月23日掲載)
◆きっと、うまくいく?
(2013年8月9日掲載)
Fire and Forget
(2013年8月2日掲載)