オピニオン

Fire and Forget

 関節リウマチなどの治療において、導入されている概念に「Treat to Target(T2T)」というのがある。これは、ガイドラインで管理目標値などを設定して、それを達成すべく治療を行うというものだ。こう書くと、「普通のことではないか」と思われるが、T2Tでは管理目標値に達しているかどうか、一定周期で患者を検査し、モニタリングしなければならない。そして、管理目標値に達していれば今の治療を継続し、届いていなければ治療を強化するということだ。
 7月18日・19日に開催された「日本動脈硬化学会総会・学術集会」では、T2Tとは一線を画する新しい概念が紹介された。それは、「Fire and Forget」。演者によると、「管理目標値に達しているかどうかを考えない治療を行うこと」だそうだ。つまり、「大砲を撃っても、当たったかどうかは気にしない」というところから、このネーミングになっているという。この考え方では、患者のモニタリングは不要となり、医師や患者の負担が軽減される。もちろん、治療の種類によってT2TとFire and Forgetは使い分けるということになるのだろうが。
 T2TにしろFire and Forgetにしろ、「治療」のみに当てはまる概念ではない。どんな仕事にも当てはまる考え方だ。だがしかし、怠け者の私から見れば、Fire and Forgetはなんとも魅力的なメッセージとして伝わってくる。要は「やりっぱなしでOK」ということではないか。個人的にはとても気に入った概念だが、この考えをメインに治療されたらと思うと、いささか不安だ。



(2013年8月2日掲載)



前後のオピニオン

きっと、うまくいく?
(2013年8月9日掲載)
◆Fire and Forget
(2013年8月2日掲載)
パセリ問題
(2013年7月26日掲載)