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ヨッパライ運転は死者発生の度合が高く、極めて悪質な違反行為である。厳罰に処せられて当然だが、いざ検査に当っては、その酩酊度は厳正に判定されなければならない。 違反運転者の体内アルコール量が正確に測定されなくてはいけないが、過日、本来あってはならない奇妙な出来ごとが発生した。 飲酒運転取締用の検知器が、通常温度差で発生する“結露”、つまり単なる水分をアルコールと勘違いして反応してしまったのである。なんと、この誤作動により192件もの運転者が不適切に摘発されてしまった。 運転手の中にはほとんどシラフに近い状態の者もいたろうが、結果として、全員が検知通り認めた、ということで大問題には至らずに済んでいる。 検知器をいきなり寒い所から取り出し、温かい呼気を通すと結露が生じ、不具合で誤作動につながったものだが、検知器を事前に温めておけば問題はなかった。 飲酒運転の検査には、この呼気検査法のほかに、血液検査法がある。だが、実はこちらの方法でもトラブルが起きている。採血部位の皮膚消毒に通常はエタノールが使用されるが、実はこれが採血試料の中に混入して実際より高値となってしまうミスである。 運転者が交通事故を起こして病院に搬送された場合は、治療が優先されるのは当然であり、呼気検査が行われることはない。かわりに、臨床検査用の採血分のおこぼれを任意に分けてもらって、アルコール量を検知することが行われる。 こうして、泥酔或いは致死量にも当たる2.5mg/ml超という高値が示されることがあるが、実はこれがミス検知の疑いがすこぶる高いというわけである。 こんな背景もあって、欧米ではエタノール消毒により採血した試料は、法的に無効とする処置がとられている。実際に飲酒していなくとも飲酒運転とみなされたり、そのための交通事故として、あらぬ疑い、責任を背負わされたりしたのでは、真面目な運転手にはたまったものではない。 ただ、採血時の消毒薬をエタノール以外のものにすれば問題はなくなるわけで、運転者対象の検査時にはインプロパノールなどが適切ではないかとされている。 外傷で緊急入院した場合、本来、医学的に血中エタノール検査は必須とされており、実際、アメリカではこうしたケースでは全例に実施されているが、日本では保険で認められていないこともあってか、ほとんどが未実施状態。 飲酒運転は絶対許されぬ行為であり、そのためにも正確な検査数値が測定されるよう法整備が必要である。
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