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改正臓器移植法が成立したが、日本人の国民性を考えると、今後も相当な難局が予想される。 直近の現実を直視すると、昨年末大きな希望を抱いて渡米した1才の子が、残念ながら急逝した。全国から寄せられた善意も募金も一瞬にして水泡に帰してしまった。涙を誘う大変な美談に違いはないが、その陰に、移植に関わる世界の専門家の厳しい批判のあることを直視しなければならない。 そもそも臓器提供の不足はどこの国にもある共通課題。人口百万人当たりの年間提供数は、スペイン34人、アメリカ24人などに比べ、日本はなんと1人にも満たない。それ故、海外渡航に活路を見出すしかなかったのだ。 その結果、「日本は立派な移植技術があるのだから、自給自足を心がけるべきだ」と外国から痛烈な批判を浴びることになる。既にオーストラリアは、日本人の移植を受けつけなくなったし、ドイツからは「日本の子どもを1人助ければドイツの子どもを1人救えなくなる」と言われる始末。つまり、自国民優先を明確にかかげているのだ。 世界標準から外れた日本の移植制度に対して、外国から厳しい指摘があるのは当然であり何の反論もできない。 そもそもこれまでの移植法は、平成11年に施行され10年経過したが、思うようには機能しなかった。直接的な問題としては、「移植コーディネーター」の不足があげられる。今後も体制整備に向けた最優先課題として、家族の意思確認等を担う専門家の活動なくしては何も進まないだろう。 現在、日本臓器移植ネットワークに所属しているコーディネーターは21名だが、学会は10倍の拡充を求めている。 だが、当面厚労省の決めた増員計画は1・5倍の31名にすぎない。医学的助言を与える関連職員5名を含めても、あまりにも規模が小さい。 移植推進費は平成22年度予算として10億円。極めて小額ではあるが、小さい一歩を着実に大きくしていかねば。医療の世界的後進分野に於ける価値ある前進に期待したい。
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