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チェルノブイリ原発事故では、人工妊娠中絶がなんと10万件以上も増加したという。こんな情報も少なからず影響したのだろうか、今度の東日本大震災でも中絶の増加傾向が少なからず見られるという。 「日本医学放射線学会」他からの指摘によるもので、過剰反応により「取り返しがつかない対応」にならないかと警告を発している。 貴重な妊娠・出産の折角のチャンスを、慎重な検討もせず、ミスミス逃がしてしまうような愚はなんとしても避けなければ。 妊娠にマイナス影響を与える要因の1つに環境因子があり、放射線がその代表格であることは確か。生まれた子どもの発達異常には生後十数年~数十年経過して顕在化するものもある。とにかく、専門家の適切な意見を十分咀嚼、吟味することだ。 子どもが健やかに育って欲しいことは誰しも願うことだが、このほど妊婦10万人を対象とする「子どもと健康と環境に関する全国調査」=「エコチル調査」(Japan Eco & Child Study)が、環境省の事業として実施されることになった。2010年度から2032年まで長期にわたる本格的取組みである。 調査参加者の登録は、2011年1月末より開始され、指定地域で3年間に出生する子どもの半数以上をカバーするのが目標である。 この企画がスタートした直後、大震災が突発した。まさに、予見していたが如き、あまりにもタイムリーな偶然性には驚くばかりである。 生まれた子どもは13才まで追跡され、小児科医による面接調査も予定されている。 チェルノブイリの事故発生当時、たまたま現場近くに住んでいた日本人医師が、事故後5~6年して甲状腺異常児が多数発生したことを伝えている。 その他、生殖発生毒性物質という視点では、医薬品や嗜好品がまず注目される。抗がん剤の毒性はもちろん、歴史的には妊娠中のサリドマイド剤服用による四肢奇形発生例や、ジエチルスチルベストロール服用により、子どもが思春期以降に膣がんを多発した薬害等が有名である。 とにかく、今回の放射線騒動は相手が目に見えないものだけに、対応はとまどうばかり。関連情報には細心の注意を払い、こんな時こそ患者学の認識をもって正しく行動しなくてはならない。
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