オピニオン

すべての道は「消費」に通ず

 ランニングブームだそうだ。確かに、道を歩けば日に十回はカラフルなウエアに身を包んだランナーにぶつかる。上から下まで揃えると数万円もかかるとか。ちょっとした衣装代よりも高価である。先日もスポーツ店を覗いて驚いた。5、6年前は申し訳程度のコーナーが片隅に設けられていただけなのに、いまやランニンググッズ(それにしても走るために必要なグッズの何と夥しきことよ)を求める人々がとぐろを巻いている。しかも、結構待たされているだろうに誰ひとり、嫌な顔ひとつしていない。というか、待たされることに喜びを感じているようにさえ見える。金を払うために待つのは我慢がならないので当方はすぐさま退却したが、帰途、不意に、遠い過去に見た同じような光景がフラッシュバックする。脳裏に蘇ったのは、華やかなりしバブル絶頂期の映像、DCブランド(!)のバーゲンに我先にと人々が群がり列を成していた、あの光景であった。そういえばスポーツ店の人だかりに占めるバブル世代の割合も結構高かったような。
 そんなわけで、走ることは、いまやスポーツやレジャーである以前に、消費行動として定着したということだろう。さして金のかからない運動(すなわち、現代社会において消費の外側にある数少ない行為のひとつ)と軽く考え、二十年来、寝間着同然の格好で走り続けてきた身としては居心地の悪さを禁じ得ないが、これも時代の趨勢か。この分でいくといずれ政府が目をつけるのも必至。何しろメタボ予防に最適なばかりか消費意欲の向上にも結びつくのだ。走った距離に応じてポイントが発行される日も近い。
 さて、ポイントといえば例の調剤ポイントの問題。「禁止措置」の施行「延期」からおよそ3か月が経過したが、量販店側に禁止を承服する気配はない。それもそのはず、ひとたび「消費」と結びついた行為は簡単には元に戻らない。すべての道は消費に通ず。これも時代の趨勢である。



(2012年6月15日掲載)



前後のオピニオン

市場拡大再算定対象品目と候補品目に3倍の開き――右往左往したメーカー
(2012年6月22日掲載)
◆すべての道は「消費」に通ず
(2012年6月15日掲載)
日医会長の分業批判で広がる波紋
(2012年6月8日掲載)