オピニオン
ゆく年、くる年
「製薬産業としては満足すべきものではないし、行政にとってもフラストレーションの溜まる結果」。製薬協会長も務めるアステラス製薬の青木初夫会長は、同社の記者懇談会でそう感想を述べた。言うまでもなく06年度薬価制度改革の話だ。思えば05年早々の「クレストール」問題に端を発した今回の制度改革論議は、7月に業界側が「申請価格協議方式」を提案したことで、従来の行政主導による目先の財源論とは一味違う議論を期待したが、それも衆院選での小泉自民党の圧勝劇で一変。結局は、「医療費抑制」を大前提としたメニュー選びに終始してしまった。青木会長も「論理的なところから乖離して、『取れるところから取る』『守るべきは守る』というスタンスに陥り、互いに不満に終わった」と洩らす。
しかし、「行政側の不満」が、「成分加重平均方式」と「毎年改定」の導入が見送られた点にあったとすれば、両案ともに将来的な「含み」を持たせることで少しは溜飲を下げたことだろう。他方、製薬産業は、「薬価算定組織での意見陳述機会」を得たことが唯一の成果といえるが、前途は多難。そのうえ青木会長によると、「政府と産業との対話の場」とした提案も望みが断たれたという。「政府が1つの産業とだけそうした場をもった前例はない」というのがその理由とか。前例破りが得意なはずの小泉総理にも見放されてしまったということか。2年おきに、暗澹たる気分で正月を迎えるのが、製薬産業関係者の習い性となりそうだ。せめてこれが「毎年」の慣例にならないことを祈って05年を締めくくることにしよう。
(2005年12月23日掲載)
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