オピニオン

続く「喫煙率」をめぐる攻防

 がん対策推進基本計画の変更案が6月頃、閣議決定される見通しだ。この計画案では、初めて喫煙率の数値目標を記載したことが注目点の一つ。現在19.5%の成人喫煙率を、22年度までに12%とすることを掲げている。
 同計画案は、厚生労働大臣の諮問に対し、がん対策推進協議会が答申する形で策定される。そして、関係省庁との協議を経て閣議決定となる運びだ。答申が行われたのは今年3月1日。この日のがん対策推進協議会は1時間弱で終了、答申もスムーズに行われた。しかし、厚労省および協議会委員は、異様な緊張感に包まれていた。
 協議会では全員一致だった喫煙率の目標値記載だが、民主党内では反対する意見も強く、予断を許さない状況だった。答申日前に日本医学会などが喫煙率目標を強く支持する声明を発表したのも、こうした動きをけん制するため。答申日においても、民主党の厚生労働部門会議が、がん対策推進協議会が開催される前の午前に開かれており、成り行き次第では数値目標が外される懸念があった。協議会では、数値目標が外された場合に備え、答申の予備日を設定していたという。
 答申は無事になされたが、計画に喫煙率の数値目標を盛り込むことで落着したわけではない。「数値目標を外せ」との声は依然強く、攻防は今も継続中とのこと。閣議決定されるまで、計画案はあくまで「案」。予断を許さない状況が続いている。



(2012年5月18日掲載)



前後のオピニオン

故人は…
(2012年6月1日掲載)
◆続く「喫煙率」をめぐる攻防
(2012年5月18日掲載)
専門家の役割
(2012年5月11日掲載)