オピニオン

米国の薬価引き下げ政策

 トランプ米大統領が5月12日に、米国における医薬品の価格を他国と同水準にまで引き下げるための大統領令に署名した。薬価を59~90%下げる方針で、今後、製薬会社に価格の目標を提示して値下げを促し、進展がみられなければ追加措置を講じるという。これに対し、米国研究製薬工業協会(PhRMA)のスティーブン・J・ユーブル会長兼CEOは声明を発表し、「米国人の負担を軽減するためには、米国の価格が高い本当の理由、つまり諸外国が正当な負担をしていないこと、そして仲介業者が米国の患者の価格を押し上げているという問題に対処する必要がある」などと指摘するとともに、PhRMA加盟各社による米国での投資が減少する可能性や、革新的な医薬品の開発において中国依存が高まる可能性、雇用や経済への悪影響を示唆した。
 関税政策に始まった一連の動きに対する米国内の反応は日本では中々見えてこないが、この薬価引き下げについては不透明な部分も多く、その実効性に懐疑的な意見が多数見受けられる。ただ、この薬価引き下げが実現されれば、製薬業界・企業に甚大な影響が出ることは免れない。特に、現在の医薬品開発における主要プレイヤーである中小バイテク企業への影響が懸念されており、彼らへの投資が急速に減少し、世界規模で新薬開発が停滞する恐れがある。新薬を望む患者はまだまだ多く、アンメットニーズが置き去りにならないよう、対応を求めたい。



(2025年5月23日掲載)



前後のオピニオン

入札をいったん中止
(2025年5月30日掲載)
◆米国の薬価引き下げ政策
(2025年5月23日掲載)
「彼らは知りたがらない」
(2025年5月16日掲載)