オピニオン

究極の買収防衛策

 アパレル大手のワールドに続いて、大手飲料メーカーのポッカが、自社株買収(MBO)による株式非公開化の方針を発表した。株式上場廃止の理由については両社とも異口同音に、長期的な戦略に基づく経営展開を行ううえで必要と主張している。確かに、四半期毎の業績開示が義務付けられたことなどにより、企業関係者からは「1年中決算数字に追われている」との嘆き声が聞こえていたのも事実。ただやはり、上場廃止の最大の狙いは、敵対的買収防衛にあることは誰の目にも明らか。「株式上場は1流企業の証し」と言われたのも今は昔、国内企業の買収に対する危機意識は、上場という「名誉」をも上回るということか。
 自民党・企業統治委員会は今年7月に取りまとめた「公正なM&Aルールに関する提言」で、検討課題の1つとして、現行制度下では限定的にしか認められていない「TOBの撤回の容認」など、TOB条件の柔軟化を挙げた。しかしこの点について、西村ときわ法律事務所の太田洋弁護士は、「買収側にかなり有利になるのでは」と指摘する。「従来は買収側も相当の覚悟でTOBを仕掛けたが、条件の柔軟化により、取り敢えずTOBを仕掛け、防衛策を発動されたら撤回すればいいという意識が働く」というわけだ。こうなると、「究極の買収防衛策は株式非公開」という考えに企業が傾くのも一面では理解できる。新会社法の施行を目前に控え、日本経済の「買収防衛バブル」(太田弁護士)は、いましばらく続きそうな気配である。



(2005年9月16日掲載)



前後のオピニオン

“小泉幕府”と3つの改革
(2005年9月23日掲載)
◆究極の買収防衛策
(2005年9月16日掲載)
奥さんとうまくいっていますか?
(2005年9月9日掲載)