オピニオン
「人はなぜ麻薬常用者になるのか?」
1959年に発表した「裸のランチ」で一躍、時代の寵児となった米国人作家ウィリアム・バロウズ(1914~1997)は、デビュー作である自伝的小説「ジャンキー」(1953年)で、15年以上にわたって麻薬に溺れた経験を赤裸々につづっている。
「よく尋ねられるのは、『人はなぜ麻薬常用者になるのか?』という質問だ」(中略)「麻薬常用者になるのは、それ以外に何も有力な行動目的がないからだ。麻薬は競争相手がないことによって勝利を収める。私は好奇心から麻薬を使ってみた。そして、麻薬が買えるときはだらだらと注射を打ち続け、結局はまったのだ。私が話を聞いた常用者たちもたいてい似たような経験を物語っている。彼らははっきり思いだせるような理由があって麻薬を使い始めたわけではないのだ。みんなだらだらと麻薬を使い続けているうちにはまってしまうだけのことだ。常用癖に陥ったことのない者には、常用者が麻薬を求める独特の切実性はわからない。誰だって常用者になるつもりでなるわけではない。ある朝、麻薬切れの苦痛に目を覚まし、そこで常用者になるのだ」
日本でも薬物問題は深刻化している。若年化が顕著な大麻使用は言うに及ばず、危険ドラッグも依然、取り締まる側とのいたちごっこが続く。とりわけ最近、問題となっているのは、主に若年層によるOTC医薬品等の過剰摂取や濫用、いわゆるオーバードーズ(OD)だ。厚労省はOD対策として、5月1日より医薬品医療機器等法に基づく「指定濫用防止医薬品」を指定し販売を厳格化する。指定されたのは▽エフェドリン▽コデイン▽ジヒドロコデイン▽ジフェンヒドラミン▽デキストロメトルファン▽プソイドエフェドリン▽ブロモバレリル尿素▽メチルエフェドリンの8成分。さらに厚労省は、濫用の実態が把握された成分は速やかに追加指定する方針も示している。
バロウズは「一度ジャンキーになったら永遠にジャンキーだ。麻薬を使うのをやめることはできるけれど、でも最初の習慣がついたら、絶対に麻薬から足を洗えない」と戒めている。重要なのは、濫用を未然に防ぐこと。ゲートキーパーとしての薬局・薬剤師の役割はきわめて重い。
(2026年4月24日掲載)
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