オピニオン
未払い大国ニッポン
今の日本を象徴する言葉の1つとして、「未払い」という言葉が頭に思い浮かんだ。学校給食費や保育園の保育料、年金保険料、病院の診察代など、「未払い」という形で、日本の社会システムの一端が崩壊し始めている。日本は、何故このような事態に陥ってしまったのか。
この原因として、戦後、集落やムラ、家族といったある一定の価値観を共有する共同体中心の生活基盤が、個人を中心とする生活基盤へと移り変わっていった影響が考えられる。近年は、個人というものを尊重するあまり、資本主義経済下における個人の自由が、あたかも個人における責任を有さない独善的な自由をも許容しているかのような雰囲気がある。既に、一定のセーフティーネットの役割を果たしてきた共同体は、その機能を持たず、「未払い」のような問題に対し、何の効力も発揮できないようになってしまった。
現実はあまりにも深刻で、病院における医療費の「未払い」は、医療機関の倒産の大きな要因となっている。確信的な「未払い」者に対する厳正かつ強硬な対処を求める声は多いが、現実的には殆ど対策を取れていない。「未払い」の中には、考慮すべき本当に払えないような事情もあろう。一方、払えるのに払わない確信犯には対処しなければなるまい。「未払い」大国ニッポンとならないためにも、「未払い」状況を客観的に判断するための第三者機関等を立ち上げるなど、公平な社会システムを構築することが急務だ。
(2007年10月19日掲載)
前後のオピニオン |
◇医師の責任 (2007年10月26日掲載) |
◆未払い大国ニッポン (2007年10月19日掲載) |
◇高齢者医療制度の負担凍結には驚いた (2007年10月12日掲載) |