オピニオン

性に対して向き合えるように

 今年8月、日本初のHIV-1感染症の曝露前予防薬(PrEP)として「ツルバダ配合錠」が承認された。これによって公的にPrEPの情報提供が可能となり、PrEPの認知度が上がることが期待される。その一方で、予防薬であるため保険適応外となるPrEPの価格も課題だ。
 HIV/AIDS啓発活動コンソーシアム「HIV/AIDS GAP6」はPrEPを必要とする人が確実にアクセスできる環境整備のため、PrEPの保険適用や公費助成を求める要望書を厚生労働省に提出。8月より署名活動も行っている。これに対して記者団より「性感染症のリスクがある人たちの予防薬を保険で公的に負担することに抵抗がある人もいるのでは」という質問が出た。日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスの高久陽介氏は「そういう感情が起こることは防げないと思うが」と前置きした上で、「健康保険というのは様々な営みの中で回避できないことがあり、その中で起きてしまう疾病や怪我に対して皆で助け合っていく仕組みだと私は理解している」とし、「セックスを介するため色眼鏡がかかってしまうが、生活習慣が怠惰で発症する生活習慣病を保険適用にすることと同じような話ではないか」と明快に返答した。目から鱗が落ちる思いだった。私自身、事前に感染症を防ぐことの重要性を、性に対する色眼鏡で見落としていたと思い知らされた。
 特に日本においては性に対するタブー視がいまだに強く、HIVの予防啓発がなかなか進まない一つの理由になっている。高久氏は「HIVやPrEPをきっかけに性に対してもっとフラットに、正面から向き合えるようになってほしい」と訴えた。



(2024年11月8日掲載)



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