オピニオン

農薬バレンタイン

 バレンタインデーにチョコレートを贈るのは、甘い気持を伝えるためと言われ、女性から男性へ贈る習慣は日本で始まったとされる。このイベントに欠かせないチョコレートが今、ピンチにさらされている。
 チョコレートの原料となるカカオ豆について厚生労働省は昨年8月、直ちに健康に影響を与える恐れはないとしたうえで、日本のカカオ豆輸入量の約70%を占めるガーナ産カカオ豆から残留基準値を超える残留農薬「クロルピリホス」が検出され、検査命令を実施すると発表した。同剤は、皮膚接触や経口摂取・吸入などで頭痛や筋肉攣縮などを引き起こし、被ばくが重度の場合には、意識消失やけいれん、最悪の場合は死に至る。
 そもそもカカオは、日陰で育つため他の木など植物の間に植えて育てるが、単一の植物のみが植えられている場合と異なり、生態系が豊かになるため、カカオの木に鳥や虫などの棲みかを与える。しかし、1970年代には日なたでも栽培可能なカカオが登場し、大規模なプランテーション開発が進められるようになった。
 ただ、この新しい品種は、収量は多いが大量の化学肥料や農薬を必要とし、カカオに吸収されなかった化学肥料は、やがて地下水に溶け込んで水を汚染する。また、強い農薬の使用は、農民の健康を害するとともに、害虫や病原菌に耐性を持たせて病気や害虫の大発生を招く。農民は、耕作を放棄し、他の場所で新たに森を切り開き、カカオを植え、同じような農業を行い、また病害虫の大発生でそこを捨てるということを繰り返すという。
 より快適な生活や生きるためには、今まで以上に生産量を上げる必要もある。しかし自然破壊の影響は、巡り巡って自らに災いを降り注ぐことを忘れてはならない。



(2007年2月16日掲載)



前後のオピニオン

“都市圏産”登録販売者候補、ドームへ
(2007年2月23日掲載)
◆農薬バレンタイン
(2007年2月16日掲載)
健康志向の「不健康」
(2007年2月12日掲載)